ちょっと話しをするね。

映画のこととか

차이나타운 Coin Locker Girl

2015年
監督 한준희 ハン・ジュニ
出演 김고은 キム・ゴウン, 김혜수 キム・ヘス

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10番のコインロッカーに捨てられていたので、10=일영(イリョン)という名前で呼ばれる少女。そんな子どもたちを集めて犯罪の道具として使っている엄마 (お母さん)と呼ばれる女性。

少女が生き延びるために必要なかった感情を、いつか知ることは”お母さん”にはわかっていたことだろう。そして、それが決してかなわないことも。かつての自分と同じように。

チャイナタウンの底辺で生きる者たちの生き様の残酷さに対比して、イリョンの、自覚さえしていない不器用で無垢な恋。

”お母さん”を演じるキム・ヘスさんは愛らしい顔立ちゆえに役の幅を広げることに苦労するタイプの女優だが、ぼさぼさの白髪にシミだらけの肌で精一杯の役作りをしている。彼女たちをとりまく男性俳優たちも、それぞれ熱心な演技をしているように思えるのは、そんなリードアクターに引っ張られてのことかもしれない。

犯罪映画という立て付けではあるが、物語としては前世紀にはよくあった骨太の少女漫画のようだ。あるいは80年代の角川映画にも通じるが、この作品のほうがもちろんずっと洗練されているので、出来ることなら日本でも若手女優の初期の主演作はこのようなレベルの作品で作ってほしいと思ってしまった。それくらい、キム・ゴウンさんの可能性を表現するために練られた作品だ。

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동주 DONGJU;The Portrait of A Poet

2016年
監督 이준익 イ・ジュニク
出演 강하늘 カン・ハヌル, 박정민 パク・ジョンミン

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ユン・ドンジュの詩は静かな信念に満ちている。
従兄弟のモンギュもまた情熱的な青年であった。

自分たちのアイデンティティを育み、しだいに奪われ、耐え、抗いながら無念の内に亡くなった若者の物語。

彼らの信念の強さには、生まれ育った土地や信仰の要素が大きいのだろう。それでも彼らはそれぞれ個性を持った若者として、周囲の人々とのあたたかさに囲まれて生きていたはずだった。

このような偉大な人物を演じるのは、青春映画の要素をクローズアップしたとしても、俳優にとっては重圧があったことだろう。その重圧の半分をカン・ハヌルさんから肩代わりするように、モンギュを演じるパク・ジョンミンさんの、目や唇がセリフ以上に語りかけてくるようだ。

(ところで留学先で世話になる先生の娘さんという日本人役の女優さんが日本人だと思うほど自然な日本語を話していたので驚いた。京都の風景なども韓国内で撮影したそうなので、やはりそれはなんとなくわかるものだ)

個人の不幸が石ころのように転がっていた時代の映画を観るのは苦しい。とくにそれが自分の国の過去となれば息が出来なくなってしまう。残されたユン・ドンジュの作品はとても少なくて、彼の書き溜めた紙片を失ったまま今に至る時代のやりきれなさに身が引き裂かれる思いがする。

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로봇, 소리 SORI:Voice from the Heart

2016年
監督 이호재 イ・ホジェ
出演 이성민 イ・ソンミン

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行方不明の娘を探し続ける父親と、地球上のすべての音を収集出来るロボット(女の子)が出会うライトSF。

ロボットはソリと名付けられる。소리(音、声)という意味だ。ソリは行方不明の娘の幼いころに重なって見えて、とてもかわいらしく愛らしく感じるのだが、同時にとてもたくましい。ピンチを自分で切り抜ける強さがある。

守るべき娘を守れなかった父親は現実を受け止めきれずさまよっていたけれど、娘もたくましさを持つ女の子だったのだろう。作中で父娘を引き裂いた悲劇は、作品の舞台である大邱で過去にあったことであるという。

共演者がロボットであることもあり、イ・ソンミンさんは一人芝居のパートが多いことになるのだが、娘にたどりつく場面も含め、その演技に胸を打たれる。

コミカルで荒唐無稽な場面も多いのでほっとすることも多いが、見ている者にとってはソリが戦う愛らしい少女にしか見えなくなってくるので、ハラハラと固唾を飲んで見守る中、ソリは彷徨う一人の男性を救い出すのだ。

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4등 4th Place

2016年
監督 정지우 チョン・ジウ
出演 박해준 パク・ヘジュン

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勉強も、スポーツも、芸術だって、こどもたちの競争の激しい社会。

これは水泳で大会の上位を目指す少年への体罰について真正面から描いた子ども映画で、国家人権委員会人権映画プロジェクトの映画のひとつであるそうだが、そのテーマに素直に取り組みつつ、それ以上の美しさを観る者へ与えてくれる。

伸び悩む少年の指導を任されたコーチもまた、競争に負けた若者であった。怒鳴ること、叩くことしか出来ない。

息子を優勝させたい母親は子供のためを思って鬼のように縛りつけるけれど、そうせざるをえないのは誰のせいなのか。子どもたちは薄々それに気づいているから黙って言うことを聞く。子育てを押しつけられた母親が追い詰められた結果を、責めるのは簡単だ。でもそれまで父親は何をやっていたというのか。

体罰の連鎖の裏には、男性中心社会の歪みがあるように思う。自分の弱みや苦痛を吐き出せなければ、親しい人の苦しみに気づかなければ、続く一方だ。

しかし子どもの健やかさはかわいそうな大人たちを軽々と飛び越えこえることもできる。子どもたちだけの、とりわけ少年特有の、短い、けれど大切なことだけ伝えるやりとりが素敵だ。泳ぐことの楽しさを知った少年は一番強い。

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영도 Shadow Island

2015年
監督 송승응 ソン・スンウン
出演 태인호 テ・イノ

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影島は、釜山から跳ね橋でつながっている小さな島。

韓国映画らしい、厳しい暮らしを生きている青年が、不条理な暴力を受けながら、友人と慰め合い、やはり苦しい女性とその子供にほんの少し心を開き、必死に生にしがみつき、裏切られ、絶望するお話。

感情を内に込めた寡黙な青年は、その肉体が傷ついたくらいでは殻は破れないけれど、ただ女性であるというだけで自身の身体を人質にされる女性たちや、翻弄される少年少女と等しく弱者で、ただ男性であると言うだけで暴力に晒される。叫んでもどうせ届かないから叫ばない。

どこからでも海が見える土地に住む暮らしは、広い世界と繋がっているというよりも、逃げ場のない閉塞感のほうが圧倒的なのかもしれない。

しかし苦しそうに、かわいそうに見える人間は本当に不幸だろうかというとそれは違うと思う。彼だけの大切な一瞬一瞬の価値を誰も見ていないだけだ。

この映画のようにまだ荒削りな作品の良いところは、作り手がどんな映画を作りたかったのか、生々しく見えるところ。あの映画やその映画のようなものを目指して、結果的に出来上がった形が楽しめる。

主演のテ・イノさんがよく脱ぐ。監督は大学の後輩で、どうしてもこの役を彼に演じてもらいたかったらしい。白く蝋のように冷たそうな肌は、冷たい海に浮かび、大きなクマのぬいぐるみもよく似合い、幼馴染の友人は我慢強い彼との距離をもどかしく感じていたように思える。

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